ソフト・ブリンカー (PC の電源ランプを怪しい雰囲気に)


注意事項

お約束的な文言で申し訳ないのですが、ここで示した回路が皆様の希望に添える動作をするかどうか保証できません。また、安全性と耐久性についても保証できません。本記事を参考に製作、使用する時における事故、怪我などのリスクは十分予見できますが、各自の注意努力と、責任範囲において対処してください。

はじめに

録画サーバーとして運用している PC がスタンバイに移行すると電源 LED がチッカチッカと点滅するのですが、あまりにも無機質な点滅で何とかならないかと思って、点滅を緩やかにする回路を作ってみました。丁度ビルのてっぺんや稜線で赤く点滅する航空障害灯の様に光ります。

どんなものか

まずは光り方を見てください。ケースがショボイのは勘弁してください。



周りが明るいとイマイチかもしれませんが、夜間見ているとなんとも怪しい光り方になります。

回路図

下の図をクリックすると拡大した図面(1/2) (2/2)が現れます。青色 LED 対応の 2 号機も動作確認したので併せて参照してください。
1号機主回路
ケーブル配線

まずは電源、入出力関係ですが、電源 (CN1) は マザーボードの WOM (Wake On Modem) 端子に接続します。入力(SW1) はマザーボードの Power LED 端子に接続します。出力(SW2) は LED に接続します(抵抗挿入は不要です)。
回路方式は、入力部はフォトカプラで分離する回路です。次は積分回路です。変化を緩やかにします。 LED 駆動は V-I 変換回路です。定番的な回路のオンパレードになっています。電圧を記入してあるので、参考にしてみてください。

部品を揃える

おおよその部品はジャンクになった ATX 電源から取れる物ばかりです。OP アンプは ATX 電源に乗っていないので買う必要があるでしょう。定数にも幅があるので、どうしても、これでなければならないという物はないでしょう。下の表に各部品を置き換える場合のヒントを示します。回路を左から追った順になっています。

部品選択の幅など
R1 200Ω 180Ωから220Ω程度なら大丈夫でしょう。フォトカプラの発光側の電流を制限するためのものです。
D1 HITACHI 1S2076A 普通のスイッチングダイオードならば何でも良いです。形がツエナダイオードと似ていますが間違ってツエナダイオードを使っても Vz が 3V 以上なら問題なく使えてしまいます。
U1 TOSHIBATLP521-1 フォトカップラなら大抵使えるはずです。例えば NEC PS2561-1, SHARP PC123 です。
R2 10KΩ 5.1KΩ から 20KΩ 程度なら使用できます。
R3 470KΩ 光り方の変化の速さを調整します。R3 と C2 の積が回路図の値で計算した値と大体同じになれば良いです。点き方が大きく変わらない範囲は 330K Ωから 680KΩ程度の範囲です。また、R3 を 1MΩ B カーブの可変抵抗と普通の抵抗 100KΩ の直列接続に置き換えれば変化の速さを調節できます。
R4 330KΩ,
R5 330KΩ
R4, R5 は同一の値なら 4.7KΩから510KΩの範囲が使えます。この範囲を外れると、消費電力が大きくなったり、ノイズに弱くなり発振する可能性もあります。R4, R5 を一つの可変抵抗にまとめると、点灯、消灯の速さを別に調節できます。点灯(消灯)を早くすると消灯(点灯)は遅くなります。
C2 0.47μF セラミック または マイラコンデンサを使用してください。高級コンデンサである必要はありません。コンデンサにかかる電圧が反転します。従って、タンタルや電解コンデンサは使用できません。容量は 0.33μF から 0.68μF位の範囲が使えます。R3 と C2 の積が回路図の値で計算した値と大体同じになれば良いです。
D2 NIHON INTER 11EQS04 SBD (ショットキー・バリア・ダイオード) で VRRM (繰り返しピーク逆電圧) が 30V 以上なら使えます。ATX 電源などから取り外したものを使う場合、テスタで VF (順方向電圧) を確かめて 0.3V 以下の物なら大抵は SBD です。デジタルテスタの中には導通チェック時の読みが VF になっているか比例しているのでスイッチングダイオードの場合の読みと比較しながら確かめると良いでしょう。
C1 3.3μF 35V タンタル 手持ちの関係でタンタルコンデンサを使用しました。電源ラインなので電解コンデンサを使用したほうが良いでしょう。容量は 1μF から 10μF の間で耐圧は 25V 以上を使ってください。温度グレードは 85℃、用途は一般用で十分です。ESR 値が低い必要はありません。どうしてもタンタルコンデンサを使うのならば、耐圧は 35V 以上にしてください。
C3 0.1μF 0.047μF から 0.33μF までのセラミックまたはマイラコンデンサを使用してください。U2 の近傍に配置します。
R6 9.1KΩ
R7 1KΩ
R8 47Ω
青色 LED を使う場合、次のように変更すると、明暗の変化がスムーズになります。
パーツ番号抵抗値
R6 39KΩ
R7 1KΩ
R8 10Ω
青色 LED 対応の定数に変更した後でも、他の色の LED を点灯できます。
R6, R7 に他の抵抗値を使う場合、次の様にしてください。
  • 2KΩ ≦ R6+R7 ≦ 200KΩ
  • 回路図のままで R6:R7 ≒ 9:1 にします。青色 LED 対応の定数で R6:R7 ≒ 39:1 にします。
R8 を小さくすると LED が明るくなります。しかし、回路図のまま (R6:R7 ≒ 9:1) の場合は、36Ω 以下にはしないでください。青色 LED 対応の定数 (R6:R7 ≒ 39:1) の場合は、7.5Ω 以下にしないでください。抵抗が低すぎると U2の駆動能力を超えてしまいます。
U2 JRC NJM2904D 単一電源 2 回路入りの LM358 タイプの OP アンプなら使用できます。例えば National Semiconductor LM2904N, LM358N, LM358AN, NEC uPC1251, ROHM BA10358 です。
注: RC4558 の様な両電源タイプは使用できません。CMOS OP アンプを使う場合、LMC662CN の様に出力電流が大きい (10mA 以上の) IC 以外は使えません。LMC662CN を使うと出力振幅に余裕があるので明暗の変化もさらにスムーズになると思われますが、少し値段が高いので無理に使う必要はありません。
基板 SUNHAYATO ICB-88 タイプ 紙フェノール片面 72mm x 48mm で SUNHAYATO ICB-88 タイプで十分です。ただし、出来れば秋月電子の AE-3G (72mm x 51mm) のような両面スルーホール基板のほうが良いです。スルーホール基板のランドが熱で取れることは滅多にないです。
ピンヘッダ2.54mm ピッチ 2.54mm ピッチのピンヘッダで PC に多く使われるものです。横型、縦型は好みで選んでください。千石電商だと 2544-1x40 または 2545-1x40 として売っていますし、秋月電子でも安く売っています。自分でカットして使います。カットする時に飛び散り易いので必ず両方を持つか、布などを掛けて飛び散らないようにして下さい。
コネクタ 2.54mm ピッチ
1x2:2個
1x4:2個
2.54mm ピッチのコネクタで PC に多く使われるものです。千石電商だとハウジングは 2550-1x2, 2550-1x4 ピンは 2550-10GT として売られています。ハウジングはスミチューブでも代用できます。WOM コネクタはマザーボードによっては接続が違っていたり、無い場合も有ります。その場合は +5VSB が出ている端子に接続できるコネクタを探してください。
IC ソケット 8Pin:2個 U1 用の 4 ピンのソケットは無いので 8 ピンのソケットで代用しています。2 個丁度買うよりは 10 個まとめて買ったほうがなにかと便利です。意外ともろいので、配線修正で壊してしまうこともあります。

出来上がった基板

次の様な出来上がりになります。部品の殆どはジャンク箱を漁って揃えたのでまちまちです。写真どおりの部品配置にすると、IC ピン間 1 本通すことで大体妥当な配線になります。ユニバーサル基板で作る場合は、写真のとおり数本のジャンパを飛す以外は、スズめっき線を半田で固定しながら配線できるはずです。

調整

特に調整箇所は無いですが、IC を付ける前に配線のチェックを済ませてください。

いきなり PC に接続するのではなく、5V から 6V 程度の電源を用意して通電テストを実施することをお勧めします。

CN1 の 1 番に電源の +、4 番に電源の - を供給して異常な発熱が無いか見てください。どの部品も殆ど発熱しないはずです。テスターが有るならば、各所の電圧を測定して、大体合っている確認してください。回路図で固定電圧を示していない箇所の電圧は U1 の 3 ピンは 4.9V(ほぼ 5V)、U2 の 1 ピンはほぼ 0V、U2 の 7 ピンはほぼ 0V です。

続けて点灯試験をするには SW2 に LED を接続し、SW1 に 3V 程度の電圧を(あるいは +5V 程度の電源に 330Ω程度の抵抗を挿入して)掛けてみてください。LED がジワーっと明るくなれば OK です。SW1 に電圧を掛けるのを止めると、引く様に暗くなります。点灯しない場合は LED の向きを確認し、それでもだめなら配線チェックをしてください。

注意: 電源が 4V 程度だと青色 LED は点灯しません。

オシロスコープ、あるいは少し配線が長めの測定器で U2 の 1, 2, 3 番端子を測定する場合は、プローブを直接当てるのではなくアッテネータを ON にして(あるいは 1K から 10K 程度の抵抗を通して)測定してください。そうしないと、プローブとその配線の容量成分で発振してしまいます。

取り付け

まず、基板の配線面を絶縁します。私はプラスチックシート(小物を入れていた箱を展開して流用している)をホットボンドで接着しました。シートを折り曲げたりして箱状にするのも良いでしょう。簡易的には厚紙とか、段ボールですが、湿気を吸ったり、長い年月で劣化してゆくので使わないほうが良いでしょう。ガムテープも長期使用には耐えられません。
PC への取り付けは、結束バンドまたはビニタイ(園芸用品)を穴に通して結び付けるか、両面テープで貼り付けるかして下さい。宙ぶらりんは良くありません。どこかに接触してショートしてしまいます。
各端子の接続は次のようになります。
Connector配線先
CN1 CN3, CN4 で作った延長コードで WOM (Wake On Modem) コネクタに接続します。WOM コネクタの端子機能を確認して正しく配線してください。
SW1 CN5, CN6 で作った延長コードでマザーボードの LED ヘッダピンに接続します。
SW2 LED に接続します。

使用上の注意

おおよそ 1 週間ほど通電状態ですが、故障や異常は発生していないようです。若干気になることもあります。例えば次の様なことです。
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