秋葉原でジャンク マザーボードを拾うということ...
お約束
内容は「まぁこんなこともあるもんだ」という事で捉えてください。内容はジャンク マザーボードに ついてですが、ジャンク
マザーボードは「動かなくて当たり前」です。けして、この内容を元にお店
の人やメーカーに対して「動かないよー」と困らせたり、「動くにはどーしたら良いか」といった質問 はしないようにしてください。
ジャンクマザーボードを買ったわけ
ジャンクマザーボードを買った元々の目的はマザーボードの上に乗っているフラッシュメモリが目当て
です。私にとってはマザーボードは動かなくてもかまわないのです。だって 298 円でフラッシュメモリが
手に入るのですもん。ジャンクは昔からそうだったのですが、部品取りか、あるいは復活の見込みが ありそうな場合だけ買うのがお約束です。
そうは言っても動くのか点検
マザーボードメーカーはどこか気になるところです。外資系の有名直販メーカーです(大体当てが
付くのですが)。ここでは名前を伏せておくことにしましょう。断っておきたいのはメーカーが
悪いものを作ったわけでは有りません。後で触れますが元々の設計が悪いのではなく改造したのが 故障の原因です。
動くのかどうかマザーボードを眺めてみると、なんと 3 個所も電解コンデンサが液漏れをして
いたのです。全てが同一の電源系統でないのも気になります(2つが並列接続, 1 つは別)。
レギュレータの前、後の関係も考えたがそのように思える配線ではなさそうです。ということで、
あっさりマザーボードの復活はあきらめる事にしました。電解コンデンサーが液漏れを起こしたので、
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マザーボード上の IC のいくつかは安定化されていない電源によって破壊されている可能性が高い。
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マザーボードが電解液で腐食している可能性が高い。
ということになります。コンデンサが液漏れを起こした後、すぐに修理に当たれば
マザーボードの腐食は免れます。しかし、時間もたっていますし多分だめでしょう。コンデンサ が液漏れを起こす原因はコンデンサメーカーのサイトにもありますが、
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耐圧の余裕がない。
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LC 回路だとピーク電圧に注意が行っていなかった。
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電解コンデンサにとっては高周波となる電流を多く流した。
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逆電圧をかけた。
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コンデンサの出来が悪い。
んっ待てよ、フラッシュメモリが無事だったのか心配だ。一応調べた範囲では電解 コンデンサーの電源系統とは別の電源(電源コネクタより直結)なので大丈夫かなぁ
と思っています。しかし、大元の電源が故障してマザーボード上のコンデンサーを 破壊した場合もありえるし、修理・故障状況がはっきりわからない状態ですので
なんとも言えません。一応別のマザーボードに入れて消去、書き込みとも OK でし たのでフラッシュメモリについてはこれで良しとします。
改造の痕(スイッチングレギュレータのカレントリミッタ解除?)
回路を追っていくとコンデンサはスイッチングレギュレータ SEMTECH SC1164CSW の Vcore と Vterm 系統
に接続されている様です。しかもスイッチングレギュレータ付近に改造の痕が見られました。なんと電流
制限回路を改造しています。これでは、コンデンサに高周波(200KHz)かつ大電流(ピークで 50A 位?)を
流してしまいます。改造の前後の回路を示します。ついでに SEMTECH SC1164 (SC1164CSW) のデータシートを Get
しておくとよいでしょう。
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SC1164 データシートにある応用回路 |
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改造回路 |

Vterm 回路 |
どれほど危ない改造か計算してみましょう。 R1<<(R2+R3)なので近似計算をします。
データシートによれば R3 両端電圧が 70mV (=Vlimit) で電流制限されます。まず推奨回路では、
[推奨回路 ただしPentiumII 向け]
Vr1 = R1*Ir1 ≒ Vlimit*((R2+R3)/R3)
…(1)
が成立しますので、
Ir1 ≒ (Vlimit * ((R2+R3)/R3))
/R1 …(2)
実際の値を当てはめると
Ir1 ≒ 70mV * (3.32kOHM/2.32kOHM) / 5.0mOHM ≒ 20A …(3)
となります。出力が 20A で電流制限が掛かります。大体妥当なところです。仮にワンランク上の プロセッサ向けに 40A
程度で制限だとして計算してみましょう。ただし、出力トランジスタの 安全動作領域内に収める必要があります。ちなみに今回のマザーボードに乗っているトランジスタ
は熱抵抗等を計算しないとはっきりした値は出ませんが 30A までが限界のようです。
(40A / 70mV) * 5mOHM ≒ 2.86 = ((R2+R3)/R3)
…(4)
を満たし、かつ C1 との時定数を変えないように R2, R3 を 選べば良いはずです。a//b を
(a*b)/(a+b) と定義します。
C1 * (R2 // R3) = T1 = 一定 …(5)
この時定数の計算は少し簡略化しています。交流的な見地で R1 をショート としてみなしています。すると、R2, R3の並列抵抗によって
C1 を接地するように見えます。本当は過渡現象解析をしてもう少し妥当性を
検討したいのですが...(もしかしたら見当違いの可能性も有るし)、上の式において
T1 = 0.1uF * (1kOHM // 2.32kOHM) ≒ 69.9uS …(6)
です。C1 を整理して、
(R2 // R3) ≒ 699OHM …(7)
というところでしょう。(4), (7) をおおよそ満たす入手容易な R2, R3 の値は
R2 = 2.7kOHM
R3 = 960OHM
当たりでしょう。気持ち 40A よりも小さいところで制限が掛かります。では、改造回路で見てみましょう。
[改造回路]
Ir1 = 70mV * (100.33kOHM/0.33kOHM) / 5.0mOHM ≒ 4256A
となります。なんと出力が 4256A で電流制限が掛かります。妥当な値を大きく外れています。
この状態で問題となるのは電源投入直後です。電源を入れてしばらくは、コンデンサに電荷が 溜まっていないので、ショート状態とみなせます。この状態でドライバ FET
を ON にして電流を 流すと大電流が流れます(途中に L が入っているので、電流は 0A から過渡的に上昇しますが...)。
しかも高速にスイッチされているのでコンデンサにとっては負担が大きすぎます。 電源を入れたり切ったりすることを繰り返しているうちにたちまちコンデンサを
破壊してしまいます。
まだなぞは残るけど
Vcore 系統のコンデンサ液漏れ原因は計算で大体見えてきたのですが、Vterm 系統のコンデンサ 液漏れ原因はまだなぞです。プロセッサ内部のダイオードや寄生
SCR を通して被害を受けたのか、 SC1164 が故障に至ったのか、隣接している Vcore 系統のコンデンサに暖められて道連れになった のかは不明です。
改造は慎重に
ちょっと回路定数を変更するだけでも計算を尽くして慎重にする必要があります。 なぜその値なのか良く考える必要があります。微調整(チューニング)はあくまで
最終調整です。まずは計算によって見こむ性能や動作を見きわめることが大切です。
短い命だったのね
マザーボードの生まれてから壊れるまでの期間が異常に短いのも気になりました。 マザーボード上にのっている IC の製造週をみると 0018 です。つまり
2000 年、第 18 週 (大よそ 4 月)です。2002 年 3 月 23 日にジャンクとして売られていたので、2 年持たなかった
ということになります(検査日はアメリカ表記で 2/23/02 つまり 2002 年 2 月 23 日です)。
改造してクロックアップでも試みたのでしょうか、それにしても 2 年未満で廃棄になるような 改造は感心しません。
今一度点検
こういった故障マザーボードを見て「私が格安で買った(修理上がりやメーカー放出の)
マザーは大丈夫だったよ」なんて思っているかもしれません。脅かすわけではないですが、
しばらく使ってみて何でもなくても、今一度点検することをお勧めします。電解コンデンサ などの液漏れ、膨張、セラミックコンデンサの焼損(コンデンサそのものが焦げる
というよりは、コンデンサの電極付近の基板が炭化する)、その他部品の変色、変形、 亀裂を点検してみてください。火災が起きたり、あるいは火災に至らなくても、
故障した部品から漏れ出したり、気化した化学物質が健康を害する場合があります。
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