シルクの赤い 100 円スピーカー AM ラジオ


はじめに

100 円ショップシルクで売られている赤い AM ラジオはなんと 100 円なのにスピーカーが付いてます。 いままで色々と 100円ラジオが出るも、イヤホン別売り、電池別売りで実質的に 300 円ラジオと言われ続けていましたが、 ついにスピーカーを装備し 100 円ラジオ(+100円電池)になりました。 ダイアル指示の INTERNATIONAL がいいアクセントになっています(深い意味は無さそうだ)。
外観図 基板分解図、ダイアルの文字盤を外さなければ No.2 + ドライバで分解でき、修復も容易です


基本的な構成

5Tr+2Di のスーパーヘテロダイン方式ラジオです。ちなみに低周波増幅はトランスを使用したプッシュプル方式です。 1Tr-(局部発振・混合兼用)、1Tr-(中間周波数増幅・AGC)、1Di-(検波)、1Tr-(低周波増幅 プッシュプルドライブ)、 (2Tr+1Di)-(低周波増幅 プッシュプル)で構成されています。5Tr 構成では標準的な構成のラジオといえます。

回路図

下が回路図です。クリックすると拡大図を表示します。
回路図
OSCT, IFT のピン配置
コイル上面図ピン配置


改造など

配線関係は手直しが必要だと思います。リード線の半田付けは、基板の半田が良く溶けてない状態で付けられており、 接続が良くありません。スピーカの配線は固定なしに取り回しているので、切れやすいです。長めの線材を用意して、 穴に通したり、ホットボンドで固定した方が長持ちします。電池 BOX の配線も悪く、接続部の盛り上がりで、電池が 外れやすくなっています。半田ボールも目立ちます。小さい子供が居る場合は、外れた半田ボールが口の中に ということも考えられます。
ダイアルの読みはあまり当てになりません。トリマコンデンサ、コイル類を再調整すれば少しマシになると思います。 ただ、回しすぎて壊れる危険も有ります(作りが...)。もともと 1000KHz 以上の受信はダイアル調整角が狭すぎます。
検波ダイオードはバイアスより SBD に交換のほうが良いかもしれません。バイアスだと AGC に影響する恐れが有ります。
電源電圧は AGC の回路の構成からして 3V を超えないほうが良いでしょう。トランジスタまたはコイルが壊れる 恐れがあります。実験用電源を使う場合は 3V 以下にして下さい。
消費電力を下げるため抵抗を変更するとか、音質改善のためコンデンサ容量を変更することも考えられます。 実装されている部品の定数には注意してください。示された誤差を外れている部品がありました。

改造追記

100円ラジオなので改造すると高くつくのは十分承知なのですが、それでも改造してみました。以下に改造と 効果をまとめておきます。
改造内容効果
検波ダイオードを SBD SB0030-04A (千石で売っている三洋のダイオード) に交換 ○ 効果が良く分かります。 音が明瞭になります。
元々の検波ダイオードを取り外して測定したところ摂氏 20 ℃程度の環境で Vf=0.611V だったので明らかにシリコンダイオード でした。
結合コンデンサ 0.04uF の容量を0.2uF に増やす。0.1uF のパラにしました。 ○ 効果が良く分かります。低音が聞きやすくなります。
電解コンデンサを使用する場合はボリューム側を - トランジスタ側を + にします。
低周波 プッシュプルドライブのコレクタに入っている発振止めコンデンサ 0.01uF を 1500PF に減らす。 ○注 効果が良く分かります。高音が聞きやすくなります。
ただし 1500PF は小さすぎのようです。3300PF 程度にしておかないと、部品のバラつきによっては、 低周波増幅が発振するかもしれません。同調状況によっては気にならない程度に発振気味だった。
低周波 プッシュプルトランジスタの CB 間に入っている発振止めコンデンサ 0.01uF x 2 を 1500PF x 2 に減らす。 ○注 効果が良く分かります。高音が聞きやすくなります。
ただし 1500PF は小さすぎのようです。3300PF 程度にしておかないと、部品のバラつきによっては、 低周波増幅が発振するかもしれません。コンデンサを外した状態では発振して音が出ない。
発振・混合トランジスタのコレクタに 220 Ωを挿入する。 ? あまり効果は分からない。気のせいか 1000KHz 以上の選局が若干やりやすくなったのと、インバーターノイズ の分離が少し良くなった気もする。
Q が下がって、選択幅が広くなったのかもしれない。 発振波形が少しだけ滑らかになるので、妨害波が 455KHz に変換されて入り込みにくくなるはず。
IF 増幅トランジスタを 2SC945 に交換する AGC の効きが良くなったという報告を受けました。ありがとうございます。

使用感

千葉県の北西地域で使ってみました。地域によって使用感は大きく異なると思いますので参考として読んでください。 お約束の NHK1, NHK2 は確実に聞けます。AFN 810KHz も聞けます。しかし、これより周波数が高いと、受信するのですが、 ダイアルの調整角が非常に狭くなります。調整すればすこしはマシになるのかもしれませんが、どうもバリコンの 羽の作りに問題が有りそうな気がします。
AGC がある回路なのですが、音量は窓際と部屋の中心では大きく異なり、少し動かすとボリューム調整が必要です。 イヤホン端子は有りません。しかし、改造して取り付けたた場合は位置を動かし、急に音が大きくなって ビックリするかもしれません。
音質はあまりよくありません。低音がケースに響き、割れ気味の音です。 PC やインバーターが周囲にある環境ではクロックやスイッチングノイズの方が大きいです。

Spice シミュレーション

発振だけシミュレートしてみました。LTSpice (Google 検索) にそのまま掛かる様に部品を選択してあります。バーアンテナや中間周波数トランスは省略してあります。 厳密にモデリングしたわけではないので「実際と違う」と怒らないで下さい。トランスの定数は目見当です。 発振波形の乱れが気になる場合はコレクタに 100Ω - 330Ω 程度の抵抗を入れてください。
LTSpice に入力した回路図
LTSpice 回路、プロット設定ファイル
発振開始からのプロット、20uS/Div、上:コレクタ電圧 0.6V/Div、下.緑: バリコン電圧 4V/Div、下.赤: コレクタ電流 3mA/Div 拡大プロット、0.3uS/Div 上:コレクタ電圧 0.6V/Div、下.緑: バリコン電圧 5V/Div、下.赤: コレクタ電流 4mA/Div

何かありましたら
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